入浴関連事故をゼロにするプロジェクト
-ONSEN study (hOt spring-related accideNts reSearch in Emergency and iNtensive care)-
首から湯船に長時間浸かるような日本式の入浴が日本で広く実践されている伝統であり、特に高齢者の間で睡眠の質の向上や抑うつ症状の緩和などの潜在的な健康上の利点で評価されています。
その利点にもかかわらず、入浴時の救急患者は、特に高齢者の死亡事故が多く、毎年11月から4月にかけて多く発生しています。厚生労働省人口動態統計(令和3年)によると、浴槽内での不慮の溺死及び溺水の死亡者数は4,750人で、交通事故死亡者数2,150人のおよそ2倍と報告されています。
さらには高齢化に伴い、近い将来には、年間20,000人以上が死亡する可能性も指摘されています。
特に山形県は、入浴関連死亡事故件数が全国でも上位であり、喫緊の問題となっております。また、山形市には蔵王温泉を訪れる観光客が年間120万人もいるため、入浴に関連する急性期疾患の疫学を評価することは重要です。

病院や行政、消防、観光地が連携し入浴関連事故を予防する取り組みは報告がない
研究計画・方法
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入浴(温泉)により生じた 急性疾患とその予後や重症度の関係 を調べます。
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健常人における入浴習慣 などを調べ急性疾患と比較します。
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県内の 消防本部と連携 し入浴関連事故に関する情報共有や搬送体制の充実を図ります。
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温泉地や公衆浴場などと情報を共有 しより安全な入浴・温泉活動をバックアップします。
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以上を統合し、発生頻度や重症化リスクを検討することで、さらなる高齢化社会において啓蒙を進め、発生の予防や重症化を防いでいきます。
状況
2024年12月時点
山形大学医学部ではコホート研究を行ってきた実績がある。また、コホート研究から得られたデータ管理のノウハウを活かし、山形大学医学部麻酔・集中治療データベース(YUM-ASSIST)プロジェクトを2年前から発足し、急性期に関する臨床データを包括的に利活用できる環境を構築している。
すでに、山形大学医学部附属病院における13年分の入浴関連事故症例の検討を終えており、健常人に対する入浴関連調査を始めている。